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9月6日

「そろそろ9月6日だねぇ」
まだ厳しい残暑が続くある日。
学生食堂でコーヒーを飲みながらのんびりと手塚が言った。
「…そう…だな…」
間も手塚の言葉に少々照れくさそうに同意しているが、辰巳には9月6日が何の日なのかわからない。しかし手塚は、事態を良く飲み込んでいない辰巳を気にしていないようだ。
「間も楽しみなんだ? 星新一のバースディ特集!」
「………ほし…しんいち…?」
初めて聞いたであろうその名前に、間は目を丸くする。間のそんな無防備な表情なんて、めったに見られるものではない。
「今月号の『SSマガジン』で特集が組まれるって言うじゃないか! ファンとしては楽しみだよね!
『ファンが選ぶベストショートショート』にも僕は投票したんだけど、僕の好きな話、掲載されるかなぁ?」
手塚はここぞとばかりに勢い込んだので、間には口を挟む余裕もない(というより、会話において間は聞き役に徹する事が意外と多い)。
やがて手塚は時間だからと言ってその場を去り、後には話題に入り込めなかった辰巳と間が残された。間がどことなく肩を落としているように見えるのは、辰巳の気のせいだけではないだろう。
「…9月6日…か…」
手塚が「9月6日」と言った時の、少々照れくさそうな間の顔。たとえ辰巳の推測が間違ったとしても、間なら怒らないだろう。
「…プレゼント、何が良いかなぁ?」
間はしばらく無言だったが、やがて
「…駅前のケーキ屋のモンブランが美味そうだったな…」
と、小さな声で言った。



☆ ☆ ☆

あとがきとして
「星新一展」の詳細をネットで調べたとき、星氏の誕生日が9月6日だというのを知った時に思いついたネタです。
手塚先生を空気読めない人にしてごめんなさい。

黒男さんの誕生日はネット上での盛り上がりやの単発テレビ版(本木雅弘氏バージョン)設定からだけど、同人や腐女子界隈で9月6日を「黒男さんの日」として盛り上がっているのをもし手塚先生が知ったら

「9月6日は星君の誕生日だったっけー…じゃあその日はブラックジャックの誕生日という事にしましょう」

とあっさり了解してくれそうな気がします。



2010.09.06 UP。

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