第2オペ室
白石幸之助が書いた小説やイラストを置いてあります。コウノドリ・ブラックジャックなど。
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てんさいは 忘れてなくても やってくる
おまえさんなら今日はたくさん貰ったかもしれないが、と笑いながら渡された箱は、去年よりもだいぶ大きかった。落ち着いた色柄の包装紙と淡いピンクのリボンで綺麗にラッピングされている。中身が手作りチョコである事を考えると、箱の包装も悪名高き天才無免許医が自分の手でしたのだろう。それを考えると辰巳の口元もついほころぶ。
「開けていい?」
「どうぞ」
目の前に座る彼の顔は、辰巳と同じくらい期待に満ちている。自分の作った物で辰巳が驚くのを楽しみにしているのだろう。
去年のチョコレートは、実物大の大きさの心臓型チョコだった。材質を考えなければ医学生の教材に使えそうなほど精巧な物で、辰巳が食べる時はつい手術と同じようにマスクをし、メスで切開して食べた。そして今年のチョコといえば…。
「………はい?」
箱の中心には、去年と同じくらい精巧な心臓型チョコレート。両脇にはこれまた精巧な、肺型チョコレート。
「いつだったかピノコがエアインチョコ、てやつを買ってきて、ぱっと見た感じが肺胞に似ているな、と思って作ってみたんだ。意外と手こずったが、でも綺麗に出来たろう?」
彼にしては珍しいほどにこやかだ。この手作りのチョコレートはよほどの自信作なのだろう。
世間一般の男性が恋人から内臓を象った食べ物をプレゼントされてどう思うか、それは辰巳にはわからない。
それでも辰巳は自作のチョコの前で嬉しそう語る彼を見ると、なんだか自分自身も嬉しくなった。
☆ ☆ ☆
あとがきとして
白石は実際の肺胞(実際の肺)を見た事がないので、
「肺胞とエアインチョコって違うよ」
と知っている人がいらっしゃったら…
拍手でこっそりと教えて下さったら幸いです。
(人体図鑑を眺めていたときに、なんとなく似ているな、と思っただけですので)
2007.02.14 UP。
↓何か一言ありましたらどうぞ。
おしらせ
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「辰巳氏の優雅でシュールなコミックマーケットレポ」をアップ。
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「安楽死医、夏コミに来たる」をアップ。
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サイト大改装。
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