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ホワイトデーとは言うけれど

「受け取ってくれ、ブラックジャック」
 その言葉とともに綺麗にラッピングされた小さな箱を、白拍子泰彦はブラックジャックの目前に突きだした。
 受け取ってくれ、という言葉。
 綺麗にラッピングされた、小さな箱。
 白拍子泰彦。
 この三つの事柄が、ブラックジャックの頭の中ではどうしても結びつかない。
「……お前さんからそれを受け取る理由が思い当たらないが?」
 数々の修羅場をくぐり抜けてきたブラックジャックとはいえ、自宅の玄関先で白拍子泰彦にかわいらしい小箱を突きつけられる、という想像の範囲を超えた事態には、その言葉を言うのが精一杯だった。しかし白拍子はそんな細かい事は気にしていないようだ。
「今日は3月14日だ」
「見当識は大丈夫らしいな」
「そして今日はホワイトデーでもある」
「…そうらしいな」
 自信に満ちた白拍子の言葉に答えながら、ブラックジャックはピノコに渡すプレゼントや、辰巳と会う約束の事を考えていた。
「だから今日、私が君にプレゼントをするのは当然だ」
「………三段論法にもなっていないような気がするんだが?」
 軽い眩暈がして、ブラックジャックは目元を押さえた。白拍子の実家に電話して、彼の母親にそれとなく相談してみようか、とも考えた。ブラックジャックの考えにも白拍子はお構いなしだ。
「『ドクターホワイト』とも呼ばれる私が、今日という日にバレンタインのお返しをしないというのは、白拍子泰彦の名前がすたるではないか」
 天才と言われ、裏社会にもその名を知られた無免許医ブラックジャックだが、捏造と言うにはあまりにも馬鹿馬鹿しい白拍子の言い分にブチ切れた。
「いつ私がお前さんにバレンタインのプレゼントをしたっていうんだ! 寝ぼけるのもいい加減にしろ!」
 言い終わらないうちに白拍子の目の前で勢いよく扉を閉めた。なにやら扉の外で歯の浮くようなセリフが聞こえているが、ブラックジャックは完全に無視してピノコが待つキッチンへと戻った。



 その後白拍子がどうしたかは…ご想像にお任せします…。



☆ ☆ ☆

あとがきとして
 …私、これでも白拍子タンの事好きなんです…。



2007.03.14 UP。

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