自分で自分を追い詰めるシリーズ。
こうやってネットへのアップを続けていると、
「もしかしたら間に合うかもしれない」
という幻覚が見えてくる不思議。
(本にする時は、修正いれまくる予定)
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窓から差し込む夕暮れの光が、図書室内の書架の列を照らす。
用事を済ませてくるから、と言って別れたミツルはまだ来そうにない。四宮は興味を引いた本を書架から取り出し、ページをめくってみた。
誰かが近づく気配。視線を向けると、書架の向こうから少女が現れた。
四宮と同じオメガの少女…佐々木つぼみ。
言葉を交わした事はない。相手が何者かを知ってはいても、お互いあえて近づこうとはしなかった。
佐々木にとっても四宮がいたのは予想外だったのだろう。驚いた顔をしたが、すぐに四宮から視線をはずし、本の列に向き合った。
「…四宮君ってさ…東京の医大に進学するんだ…?」
視線は本の列に向けたまま、独り言のように佐々木は言った。
仲は良くなくても、あくまでも進路決定を控えた同学年同士のやりとりのように。
「…父親が…医者だからな…」
「…そっか。四宮君、頭いいしね」
佐々木は? とは聞き返せなかった。
佐々木の進路は、もう決められている。学校を卒業した後、決められた相手の元へ行き、アルファを産むことを期待されている。
佐々木が自分の進路について何を思うかは…それは聞けなかったし、四宮が聞くべきではないと思った。
状況がほんのすこしでも違えば、四宮の進路も同じであったかもしれない。
俺、もう行くから、とその場から去ろうとする四宮に、佐々木のつぶやきが聞こえた。
「…私、決めたのは自分だから…自分の意志で行くから」
抑揚を抑えた堅い声。それだからこそ、彼女の決意と、精一杯の強がりが伝わってくる。
まだ高校生、しかもオメガの彼女が、決められた道以外をどうやって選べるだろう。
「…わかっている」
それでも自分の意志で行くのだという彼女の声を、四宮は否定したくなかった。
「…いきなり話しかけてごめんね。四宮君と話が出来て、嬉しかった」
「ハルやん〜、遅れてごめん〜」
書架の向こうから、ミツルの声が響く。声が聞こえた入り口に視線を向けると、背後で遠ざかる佐々木の足音が聞こえた。四宮は振り返らずに、小さくなる足音を聞いていた
自分には彼女の行く末について、祈ることしかできないけれど。
せめて、オメガとしての発情期の苦しさに苛(さいな)まれる事がないように。
せめて、望まれた伴侶として迎え入れられるように。
彼女の行く先が、安らかなものであるように。
ミツルに話しかけられるまで、四宮はその場に立ちすくんでいた。
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とっととサクラ先生とのやりとりを書きたいよ〜〜〜!