読書感想メモとして。
図書館から借りた
「服従」
ミシェル・ウェルベック 大塚桃 訳
河出文庫
を読み終えました。
発売時に新聞か何かで話題になった記憶があり(説明文によれば単行本は2015年に発行、その後文庫化)、たまたま見かけたので借りてきました。
2022年のフランス大統領選挙にてイスラム政党が政権をとり、その後の変化を描いた作品なのですが、選挙までの出来事などは実際の出来事や人名が登場し、本当にありそうな出来事として緊迫感を持って読みました。
(2015年時点では確定していない未来で、2025年時点で読めば「あり得なかった」の世界の物語なんですよね)
作中、公安(諜報機関?)の人と主人公との会話にて
「お分かりになりますか。彼らは、通常の政治的に重要な点にはほとんど関心がなく、特に、経済をすべての中心に置くことはありません。彼らにとって不可欠な課題は人口と教育です。出生率を高め、自分たちの価値を次代に高らかに伝える者たちが勝つのです。彼らに取っては、事態はそれほど簡単なのです。経済や地政学などは目くらましに過ぎません。子どもを制する者が未来を制する。それ以外にはあり得ないのです」
そしてその教育内容が
・男女別学。女性に開かれているのは一部の教科だけで、ほとんどの女性が初等教育を終えた時点で家政学校に進み、なるべく早く結婚するのが望ましい。極めて少数の女性が結婚前に文学や芸術に進める。
・教師は例外なくイスラム教徒。
・学校のプログラム自体がコーラン教育に沿う必要がある。
ここを読んでいる時は、ホラー小説を読んでいる気分になったよ。
主人公は男性で、ある程度の自由や生活が保障されているけど、そうでない人や学びたい女性だったら嫌でしょう。
漫画で、やまじえびね著「女の子がいる場所は」を思い出したよ。
ただイスラム政党が政権を取ってからの作品内での変化は大きすぎてついていけなくなりましたが。
それでも主人公が生きている間の、ごく短い期間に起こった変化だから急すぎると思っただけで、もう少し長い時間がかけられたなら変に思わなかったかもしれません。
ちょっと期待したのが、大きな変化をもたらしたイスラム同胞団党首のベン・アッバスが、主人公と会話するなり演説シーンなりがあって欲しかったです。
作中で、ものすごく頭が良く魅力的に描写されている人物だと、萌え心的に期待したりしません?
オルダス・ハックスリーの「すばらしい新世界」でも、指導者のムスタファ・モンドが出てきてくれて腐女子的にちょっと萌えたのに。
いろいろ考えさせられるところもありましたが、この辺で。
(貸出期限が迫っているので、早めに返却しないといけないのです)
他にも書きたい事があるので、また後日。